インナーブランディング

インナーブランディングの成功事例を3社解説!成功の秘訣は量だった!?

インナーブランディングとは企業ブランドの価値や目指す姿を社員に理解させ、行動レベルで浸透させる活動のことを指します。これに対して、自社のブランド価値を社外に対して啓発する事をアウターブランディング(エクスターナルブランディング)と呼ばれることもあります。

インナーブランディング研究の第一人者である大妻女子大学短期大学部 甲斐莊 正晃(カイノショウ マサアキ)氏の定義による

インナーブランディングの成功事例を3例ピックアップしてみました。どの例も圧倒的な活動量、そして根底にある会社をよくしよう、という思いに共感します。

インナーブランディングを行う効果は多岐に渡る

  • 社員の顧客志向の向上と顧客満足度の向上
  • 顧客視点の新製品・サービス開発
  • 社員によるブランド価値の社外発信
  • 社員が仕事にやりがいや前向きな気持を感じるようになる
  • 離職率が低下する
  • 社内一体感醸成
  • 経営方針の社内浸透と業務活動での実践

インナーブランディングのステップ 

一般的にいわれるインナーブランディングは企業ブランドの価値や目指す姿を社員に理解させ、行動レベルで浸透させる活動のことを指しますが、オフィスエンニチはもう少し広い意味でインナーブランディングを捉えています。

あくまでも私の独自見解に近いです。参考にさせていただいたのは、名古屋経済大学 徐 誠敏 准教授の視点です。そこに、経営を俯瞰で捉える際に活用されるフレームワークである7Sの視点を活用致しました。

そうすると、経営戦略やスキル、スタッフなど全てをデザインする事で、はじめて内部をブランディングできる事が見えてきます。

(この視点になるとあまりに広すぎて、もはやインナーブランディングという言葉の範囲を脱してしまう為、あえて狭義にとどめている定義が多いのか、という視点もあります)

さて、インナーブランディングを狭義の意味として、理念の浸透などに的を絞ると、フローは以下のステップとなります。

知る/理解する/共感する/行動するの4ステップ

インナーブランディングは、上記のファネル(じょうご)の図で説明をすることができます。このステップは非常にシンプル。顧客の購買行動を説明する際にもこのファネルで説明をされることが多いのですが、インナーブランディングも同様です。

まず知らなければ理解をすることができません。 例えば、価値や目指す姿を知るだけでは 不十分です。それらを理解して共感する必要があるでしょう。インナーブランディングは、とても地道な活動で、繰り返し繰り返し、粘り強く行っていく必要があるでしょう。

そういった活動を通して企業内(社員一人ひとりの行動レベル)に価値や目指す姿は浸透していきます。

実際のインナーブランディングの成功事例を見てみましょう。

株式会社アイワード

同社は「民主的な運営」を運営上の重要な方針として定めています。そのための具体的な施策として、特に情報の共有化を大事にされておられます。

全社員が業務の気付きや提案を書いた日報を毎日提出。社長と専務がその中から共有すべきものをピックアップ。それをB5版の8ページ程度の社内報に掲載するとのこと。

注目はその頻度。なんと社内報は週に2回から3回発行されるそう。ほぼ日刊の時期もあるとか。

この頻度での社内報の発行は普通の会社ではあまり行われていません。これは凄いことだと感じました。

https://iword.co.jp/

https://www.jagat.or.jp/past_archives/story/4693.html

2022年2月8日追記

さて、このアイワード様に、お話を直接伺うという大変嬉しい機会がありました。社員が日報を書き、それを社内報として、ほぼ日刊で紙で配る。

便利なツールはいくらでもあるが、人の手で行っているんだ、それが大事なんだ、という信念を感じます。

社長が語ってくれた社内報

社長が社内報にかける思いを語ってくれました。

社員が240名もいるので、日報をチェックするのは大変だが、コミュニケーションを生み出すきっかけになる。だから良いことも悪いことも合わせて掲載する。

かつては「こんなことやって意味があるんですかね」という声もあった。

こういう意見は紛れもない社員の声なので評価をせず、そのまま掲載する。

当社の社内報は「フォーラム」という名前。「フォーラム」とは討論の場という意味だ。

その社員の発言がきっかけになって、「フォーラム」上で議論が交わされることに。

結果としては、残すべきという声が多く、 現在も続いてる。(2022年2月7日現在 6236号)

長く運営しているといろいろな事があるが、思いを持って続けることが如何に大事か、ということです。

コミュニケーションが生み出す技術力

この社内報がきっかけで技術力の向上にも役立っているそうです。

同社は日本で唯一、カラー写真の科学的復元技術をお持ちの会社。社内報を含めたコミュニケーションがこのような技術にもつながっているのだとか。

デヴィ夫人の 60 年前の写真の復元がこちら。

デヴィ夫人オフシャルブログ https://ameblo.jp/dewisukarno/entry-12531388379.html
株式会社アイワード HPより抜粋 http://iword.co.jp/wp/wp-content/uploads/2017/06/fukugen-s.pdf

これはすごい技術です。写真は温度と湿度、光などで、色あせが起こるそうですが、写真には、必ず色の元が残っているので、それを科学的に復元することで可能になったとのこと。

こんなすごい技術をもつ会社はどのようなインナーブランディングをしているのか。

社長の人柄がとても暖かい

インナーブランディングの根幹には人がある。人の心が見えるからこそ、社内がひとつになる。今回、社長とお話をして、そう思わずにいられない人柄を感じました。

社長の語ってくれたエピソードで印象的だったのが以下。

49歳で癌で亡くなられた部長さんがおられたそう。

この方は太陽のような女性で社員からもとても愛されていた。

亡くなられた際には、社内報で追悼号を企画し、膨大な社員のメッセージを掲載した。

ちなみに、亡くなられた部長さんはがん闘病を漫画を書いておられた。

アイワード社では、ご家族からその漫画を預かり、部長の命日に製本して出版する、プロジェクトを進めているとのこと。

なんということでしょうか。ここまでするなんて。

日本でいちばん大切にしたい会社6

という書籍にも紹介されいてるアイワードさん、本気で良い会社をつくろうという気持ちが行動にも現れています。

これがブランディングの核心ではないか。見えにくい心の部分を見えるように言語化し、行動に表す。このことで、組織が働きがいのある場所になっていくものだと、教えていただいた気がします。

↓こちらも合わせてどうぞ

インナーブランディングで離職率を下げる、社内ラジオがじわりと効果を発揮!?

株式会社ニチレイフーズ

冷凍食品の企業様。こちらは、「ハミダス活動」として、社内活性化プロジェクトを進めておられます。2018年に消費者庁長官表彰」を受賞しています。何しろ名前がいいじゃない 。

はみ出すことをよしとしてこなかった日本社会で、はみ出すことを推奨する思いが込められてるかのようです。ホームページを見ると、 こう書いてあります。

今の立ち位置から一歩ハミダシて、手を携える。

つまり、周囲との連携をすることです。

自分の仕事の範囲を決めずに、勇気を持って仕事をカブってみましょう。

取り組み

  • 毎月1回以上、社長のトップメッセージを動画で配信
  • 社員の少人数ミーティング(なんと7年間で500回以上!)
  •  T シャツを作って社員に配る
  • 工場ごとのロゴを作る

動画は役員層と経営トップの想いや社内情報を伝える事を目的にしているそうで、ハミダス活動開始から毎月1本以上という勢いですから、とにかくその手数が多いことに驚かされます。

こういう活動をされている会社は少なくはありませんが、 ニチレイさんの場合は圧倒的な活動量!

逆の見方をすると、トップの思いや、 社内の情報を共有するのに、このくらいの活動量は必要だと判断されたということでしょう。

ホームページでもかなりのページ数を使って紹介をされていて、時間とコストを使っていることがよくわかります。

https://www.nichireifoods.co.jp/corporate/hamidasu/top/

カルビー株式会社

カルビーさんは社内報に力を入れられています。

全国の優秀な社内報を表彰する『社内報アワード』を主催するウィズワークスの代表浪木克文氏は、社内報によるインナーコミュニケーションは、イノベーティブな企業づくりを促進するそう。同感です。社内報が果たす役割は決して小さくない。

カルビーでは、社内報が 「経団連推薦社内報」にて企画賞を受賞、「社内報アワード2020」も受賞されています。

A4で20ページ、2ヶ月に1回発行、その間に Web 版も製作されているということ。こちらもものすごく力を入れていらっしゃるようです。 紙と WEB を組み合わせて行なっているところがポイントで、どうしても一方通行になりがちな社内報を社員参加型の形にして運用されているようです。

2012年に、ウェブを取り入れられたようで、社長のメッセージに匿名でコメントをつけられるようにされました。 その話がまた面白くて、

社長が「夏休みにクルーズに行きます」と発言。その発言に対して社員からは匿名で、「現場は忙しくて長い夏休みなんてとれない」というコメントが入ったそう。そこから経営層と社員のコミュニケーションが活発化したんだそうです。

やはりカルビーでも同じく、情報をとにかくたくさん出すことに気を使っている様子。

社内の一大イベントも掲載するし、社員が演劇を見に行ったというパーソナルなニュースまで。

https://cd.zeroin.co.jp/cappy/calbeeintranet/

https://hiptokyo.jp/hiptalk/shanaiho/

成功事例をここまで見てきましたが、インナーブランディングにおいてはとにかく情報発信の量が大事です。

数ヶ月に一度だけの情報発信では、やはり手数(てかず)としては少ないと言えるでしょう。

理念やビジョンの浸透を行うならば、粘り強く根気強く何度もやっていくことが大事です。形は、動画でも紙面でも音声でも構いません、社風に合ったやり方で行なっていくのが良いかと思います。

RELATED POST