インナーブランディング

インナーブランディングとしてのインターナルコミュニケーション YKK の事例

インナーブランディングを7S の観点から見ると、組織全体のマネジメントつまり外装をデザインするのに対し、インターナルコミュニケーションは、一対一でのコミュニケーションではなく、組織の内装にあたる部分である、コミュニケーションを 戦略的にデザインしていく取り組みです。

7 S の要素に当てはめてみると、シェアードバリュー(共有する価値観)、 企業文化の生成に当てはまるのかもしれません。

この記事は、書籍 人を生かし組織を変えるインターナルコミュニケーション型(経団連出版)を参考にし、 YKK 社の事例を見ていきたいと思います。

YKK 社は7S の shared Valueを全社的に組織の文化レベルにまで落とし込むために、かなりの労力を使って施策を行っていることで注目いたしました。では一緒に見ていきましょう。

YKK では経営理念コアバリューを大切にしている

YKK 社は1957年、東京・日本橋馬喰町に吉田商事株式会社として設立。

同社は創業以来創業者である吉田忠雄が「他人の利を図らずして自らの繁栄はない」という意味の「善の循環」を企業理念として事業を展開。

https://www.ykk.co.jp/japanese/philosophy/index.html

93年に創業者は逝去され、翌94年に経営理念を新たに創案されました。

この経営理念は「更なるコーポレートバリューを求めて」

ホームページを訪問すると精神は経営理念の上位に位置づけられているようです。

精神を、より噛み砕いて下位の概念にしたのが、経営理念であり、それをさらに噛み砕き、実践できるようにコアバリューを定めました。それが2007年のことだそうです。

社員15500人を対象にアンケートヒアリングを行ったというから、ものすごい労力をかけていることがわかります。

まさにここは、インターナルコミュニケーションのしかけづくりですね。しかけはとても大事なフェーズです。

「会社は本気だな」と思わせるような雰囲気づくりを兼ねていたのではないかと思います。

  1. 失敗しても成功せよ/信じて任せる
  2. 品質にこだわり続ける
  3. 一点の曇り無き信用

経営理念/コアバリューを社内に浸透させるためにフォーラムを開いている

YKK は日本企業の中でも早くからグローバル展開を進めてこられました 。社員は45000人を超え世界73カ国地域に展開をされています。

2008年9月に全世界の社員を集めて4万人社員フォーラムを開催されたそう。これはすごいです。

4万人が40分の DVD をみてもらい精神/経営理念/コアバリューについて語り合う場を作ったのだそう。

ぜひ見てみたいものですが、こちらの記事に、吉田社長の経営理念を噛み砕いてわかりやすく説明されたエピソードが掲載されています。

https://www.foresight.ext.hitachi.co.jp/_ct/16994459

1970年代に始まったアメリカのジーンズメーカーとのビジネスを引き合いに出し、相手に利益になることだったら、目先の利益にとらわれない、という姿勢で取り組んだことをお話されています。

なるほど、この話を聞くと「善の循環」も、すんなりと腹落ちしますし、納得感があるので行動につなげていく気持ちになります。おそらく、上記の話もDVDに入っていたのではないかと推測。

ちなみに、この取り組みは形を変えて何度か行われており、2008年の後には2014年それから2017年にも行っているそうです。

精神経営理念コアバリューについては特に海外の現地社員から大きな共感を得られたそうです。

4万人レベルに浸透させるのは 全社的な取り組みになります。このフォーラムを開催する部門は相当大変だったことが伺えます。 30数カ国語で書かれた感想文を英訳して東京本社に集めたそう。

https://xtech.nikkei.com/it/article/JIREI/20081201/320439/

車座集会

フォーラムとは別に2008年より毎年開催しているのが社長を囲んで(車座になって)ざっくばらんな対話の機会です。

普段話をすることのできない経営者と社員が直接語り合う場づくりです。私はこの車座集会はとても良いと思います。実際に私がサラリーマンをやっていた時もこの取り組みを行いました。

一年に一回や二回では本音ではなしてもいいよ、と言われてもなかなかそうはいかないのが社員の心情ではありますが、頻度高く行うことによって精神や経営理念は着実に浸透していくものと思います。

ここで私たちの社内ラジオを紹介!

社内ラジオは低コストで経営者の想いを圧倒的な伝わりやすさで使えるサービスです。

文字に書かれた経営理念や精神は、人の気持ちを動かすことはありません。(動かすことが難しいという意味です)

ラジオはまるで自分に語りかけてくれているような気持ちになる。これは動画では得られない感覚ですね。しかも頻度高くを行うことができる。

失敗談を通じて理念を共有している

私は この失敗談を共有する取り組みは最高に良いと思いました。こちらの記事では心理的安全性の作り方という本について、言及致しました。

完璧で正確でミスなく仕事を遂行しなければいけない、という思い込みがある社員は多いと思いますが、誰でもミスをするんだという考え方を車座集会ではトップ自らが語ります。

それも積極的に失敗談を紹介するそうです。創業者の時代はカセットテープに社員の失敗談を録音して共有してきたと。

YKK社では、失敗しても成功せよというコアバリューがありますが、失敗の経験を共有して今日ユースにまで高めるという取り組みを実践されているということです。

感想

経営者の想いを直接聞くのと、額縁に入った経営理念を眺めるのとでは理解や共感の仕方がまったく違います。

創業者が亡くなって時間が経過してから、創業精神を浸透させていく難しさは並大抵のことではなかったでしょう。

例えが適切かどうかはさておいておき、宗教者であるキリストやブッダの教えは2000年以上経っても生きているわけです。

キリスト教や仏教は思いを伝えていく伝道師がたくさんいたからこそ2000年にわたり人々の思想に深く浸透してきたものと思います。

キリスト教では12人の使徒がいました。ブッダには十大弟子がいました。彼らは直接キリストやブッダの教えを聞き、心酔したものと思います。

組織が大きくなるにつれて、その 心酔した気持ちを伝達して行くのには大変な苦労と工夫が必要となってくるわけですね。

インターナルコミュニケーションは非常に泥臭いもので精神や経営理念、 コアバリューを深く理解し、心酔し、語れる人が何人もいなければ浸透させていくことは難しいということですね。