ビジョン共有力が企業の業績の源泉となる、ということを書籍やネットなどなどでよく耳にすることでしょう。
しかし具体的に数値としての調査結果で公表されてるものを非常に少なく、「理念やビジョンよりも、まず売上だ」と考える経営者が世の中のほとんどではないでしょうか。
インターナルコミュニケーションが重要そうなのは、わかる!だけど、本音は売上を上げることのほうに興味がある!
ということでしょう。
今回は数少ない調査結果の中で、経営理念やビジョンの浸透が業績に与える影響を数値で表した調査結果を紹介いたします。
出典元はリクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所が一橋大学名誉教授である野中郁次郎氏の監修のもと行ってきた「持続的成長企業研究」をベースにした、2009年の調査です。
https://www.recruit-ms.co.jp/research/essay/pdf/e091028_report.pdf
ビジョン共有力が企業業績の源泉となっている
リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所によれば業績を高める組織力は三つあるということ。
1ビジョン共有力
2知の創出力
3実行変革力
ビジョン共有力
組織が大事にしている価値観や方向性を、背景、意味文脈を含めて組織の隅々に浸透させる力
知の創出力
タテ・ヨコ・ナナメにコミュニケーションを行いつつ、豊かな関係性を育み信頼や配慮などの感情を相互に数字合わせ、意見を交換し、結合して新たなアイデアを生み出す組織レベルでの知の創出を可能にする力
実行変革力
組織機能や、業績に直接関係するものであり実行と変革を同時実現する力
上記の3つの力の関係図がこちら
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/column/0000000719/
数字はパス係数という、変数間の相関関係、因果関係を表す値です。
この図は、共分散構造分析という手法を用いて統計的な検証を行うもの。
ポイントはビジョン共有力が知の創出力および実行変革力の起点になっているということです。
- 直接、業績総合指標を高めているのは、「実行・変革力」である
- 「実行・変革力」を高めているのが、「ビジョン共有力」と「知の創出力」
- 「ビジョン共有力」は、「知の創出力」も高めている
つまり、理念やビジョン共有する力が伸びていくと業績が伸びていくということなのです!
そこで大事になってくる概念がインターナルコミュニケーションです。インターナルコミュニケーションには、二つがあります。
- 経営理念・企業理念やビジョンを組織に浸透させ日常化させるというコミュニケーショ
- 個々のコミュニケーションを活性化させて新たな価値を生み出すコミュニケーション
これら二つの側面からのアプローチが経営としての実行と変革を促し、業績を向上させるということができます。
この因果関係図を見るとビジョン共有力が知の創出力に 与える影響が0.57という数字が出ています。
直接的な実行能力に影響を及ぼすことはあまりないだろうが、知の創出には大きな影響を与えていると言えるでしょう。
ではその「知の創出」という概念。
知の創出ができる組織の特徴
- 新規事業や新商品新サービスの提案が現場から多く出されている
- 指示命令系統や部署にかかわらず必要な相手と気軽に相談やコミュニケーションができる
- 部門の枠を越えた取り組みが積極的に行われている
- 経営者と従業員の間には信頼関係が構築されている
- 意見が食い違った時立場や年齢にとらわれずに納得のいくまで話し合っている
- 仕事上でこんなに直面した時にはお互いに相談に乗ったり知恵を出し合っている
- 職場の将来像について従業員同士で話し合っている
- お互いの成功体験や失敗体験について従業員同士で情報交換し合っている
- 従業員同士の普段の話し合いの中から新しいアイデアが知恵が生まれている
これらを満たしてる組織が果たしてどれぐらいあるのか。私のサラリーマン経験で行くと、どの項目も 十分にできていなかったと言わざるを得ません。
そこで重要になってくるのがインターナルコミュニケーションの概念です。
インターナルコミュニケーションの主体となるのが、常に経営トップが主導していることが前提になってしまうと現実的ではないでしょう。
では誰が主体となって行うのか、組織の中で様々な情報共有を社員個人レベルで進めていく組織風土、つまり文化が大きく影響してくるものと考えられます。
コミュニケーションを取る取らない、というのは規則で縛ることができないからです。規則やルールには明確化されていないが、組織の構成員の行動に影響を与える、見えないルールが組織の文化だと言えます。
コミュニケーションが活発に交わされるような文化を意識的に作っていくこともインターナルコミュニケーションのデザインであると言えると思います。
参考書籍 人を生かし組織を変えるインターナルコミュニケーション経営