この記事では、社内ラジオをはじめてみたい!という方向けに、あまりコストをかけずにはじめる方法をお伝えしようと思います。
この記事を一通り目を通していただけると、もやっていた始め方のイメージをある程度、明確にするができます。ではいってみましょう!
まずは機材
とにかく予算がないのでゼロ円で始める例
スマホだけで始められます。以下のアプリをスマホにインストールしてください。
PCM録音
無料アプリです。かなりキレイな音質で録音出来ます。用意されている録音形式は以下です。
- 量子化ビット数の変更(8〜32bit, WAV形式のみ)
- ビットレートの変更(64〜256kbps, AAC形式のみ)
試しにインストールしてみてください。びっくりするようなキレイな音で録音ができるはずです。ただし。デメリットは部屋のノイズもキレイに入ることです。
これを防ぐには、スマホのマイク部分に軍手や靴下などを被せる方法もあります。社内のエゲストスピーカーを招いてのトークで、「スマホに軍手や靴下を被せて下さい」というのは、おそらく浸透し辛いでしょう。
意図しないノイズを防ぐことは出来ないです。
1万円台で始められるローコスト例
1万円台で購入できるマイクという選択肢もあります。以下のセッティングが必要な機材となるのですが、購入するものはマイクのみ。
編集ソフトは無料で超高機能なソフトがあります(後述)。配信は開始当初から有料のものを使用しなくても方法はいくらでもあります。
ローコストなコンデンサマイク
PCのUSB端子にプスッとさして、テーブルの真ん中に置いて複数人数でトークするスタイル、つまり1本で複数人数のお話を収録出来るということです。
これは「オーディオインターフェイス」が内蔵されているマイク。パソコンに音を取り込むための機能が「オーディオインターフェイス」の機能です。
どうです?この手軽さ!このマイクはコンデンサマイクという、集音能力の高いタイプです。手軽かつ安い!これはいいことづくめではないかー!
といいたいところですが、マイクの特性上、扱いづらいと感じるかも、な点(あくまでも私の主観)も書いて置きますね。
- 複数人数で話すと、声が遠くなってしまう(これはモードの切り替えも出来る)
- 部屋の空調の音や、窓ごしに聞こえる雑踏などもキレイに拾う
- 近づいて収録するとリップノイズと呼ばれる話すときの「くちゃ、ぺちゃ」などの音も拾いやすい(集音能力が高いが故です)
扱いづらさ、と書きましたが、音質が悪いということではありません。むしろ、集音性能が良すぎるくらいです。
「とりあえず」始めるには、これで十分。音はこんな感じです。私の尊敬するスーパーメンタルコーチつむちゃんのラジオです。blue yetiを使用しています。
指向性の選択ができる
更に補足すると、このマイク、指向性を選べます。指向性とは、どの方向から音を収音できるかという特性のこと。
- マイクの正面からの音だけ拾いたい
- マイクの周辺の音を全て拾いたい
- マイクの前後の音を拾いたい
- マイクの左右の音を拾いたい
4つのモードを選択出来るので、「周囲の雑音」を拾いたくない、2人でトークする声だけ拾いたい、というなら、
BIDIRECTIONAL mode(バイダイレクショナル)難しい呼び名ですが、つまり前後の音を拾いたいモードを選べばよいということ。
もう一度言うのですが、デメリット的な書き方をした部分は私の主観です。一人づつマイクを用意するほうがキレイに集音できる、という相対比較での感想と捉えてくだされば、と思います。
ただし。編集を行うという観点からはこのマイク1本では限界があります。部屋の雑音も拾うことと、複数の人の声を1本で拾うことから、編集したときに、不自然な切れ方をすることになります。
ちょっとこだわる機材例
レコーダーを使用した収録の方法
このセッティングは音質にこだわったセッティング例です。上記はオフィスエンニチで使用しているZoom F6という機材を使用した収録例です。
Zoom F6 滑らかな撮り音・爆音で収録しても割れない
Shure SM58 フラットな音で集音できる
ちなみに、このZoom F6は素晴らしい機材。
・レコーダーなので、PCが不要なのが最高です(データはSDカードに保存されます)
・マイクを挿せる上限は6本(6人同時に収録可能)
・収録できる音の幅がとても広い(笑い声など突然音量が上がる場面でも音割れせずに収録が可能)
この機材については別途、記事を書きましたので、合わせてご覧くださいませ。
社内ラジオ、失敗しない録音方法、32Bit FloatのZoom F6を購入した
この記事の中でもっとも機材にコストをかける方法ですが、その分、取り扱いし易く番組のクオリティを一気に引き上げることができます。これにマイクを3本用意すると、大体15万円程度になります。
社内への配信に必要なSound Cloudなどのサービスを使用すると、年間でプラス2万円程度費用がかかります。Youtubeを使用すると少し安くできますね。
品目 | 品番 | 数量 | 金額 | 合計 | |
ダイナミックマイク | Shure SM58 | 3 | ¥11,000 | ¥33,000 | |
マイクスタンド | K&M 23325 | 3 | ¥5,000 | ¥15,000 | |
レコーダー | Zoom F6 | 1 | ¥79,000 | ¥79,000 | |
マイクケーブル | CANARE ( カナレ ) / EC03-B(XX) BLACK マイクケーブル 3m | 3 | ¥2,180 | ¥6,540 | |
ウィンドスクリーン | SHURE ( シュア ) / A58WSBK | 3 | ¥990 | ¥2,970 | |
¥136,510 | |||||
消費税 | ¥13,651 | ||||
合計 | ¥150,161 |
*2024年1月2日時点での価格例です
PCとオーディオインターフェイスを使用した収録の方法
収録はオーティオインターフェイスという機材を通してPCに取り込む方法も。オフィスエンニチではZoom F6を購入するまで、ずっとこの方法で行っていました。
私のように移動してお客様の会社をスタジオ化しないならば、この方法は、よい音質で音声を録音する方法です。
オーディオインターフェイス
オーディオインターフェイスはマイクの音声をPCに取り込む際に必要な機械です。下記のモデルは安価かつ、4本のマイクを挿すことができます。
(公称475g)光って見えませんが、測ってみたら500g少しでした💦
https://allaccess.co.jp/audient/evo8/
概念はこんな感じ
ハイレゾ音質で録音が可能かつ、軽いため、持ち運びがめちゃ楽です。社内ラジオの音質にこだわるなら必要な機材でしょう。
オーディオインターフェイスは各社から様々な種類が出ています。以下は選び方の参考までに・・・
- マイクを4本以上挿せること
- 音質がよい(と言われていること。これは各社の機材を使ってみるとわかってきます)
- 軽ければベター(といいつつ、社内で持ち運びする程度であれば重量は気にならないでしょう)
上をみるとキリがない世界。余裕に応じて選択すると良いでしょう。
デメリットも当然あります
・配線がごちゃごちゃになりやすい
・PCでのセッティングはそれなりに複雑
デメリットも併せ持つものであることは理解しておいてよさそうです。
ここまでの価格をまとめると
PCは既にあるものを使用する前提として・・10万円前後あれば十分なクオリティを担保できると思います。
品目 | 品番 | 数量 | 金額 | 合計 |
ダイナミックマイク | Shure SM58 | 3 | ¥11,000 | ¥33,000 |
マイクスタンド | K&M 23325 | 3 | ¥5,000 | ¥15,000 |
オーディオインターフェイス | Audient EVO8 | 1 | ¥26,400 | ¥26,400 |
マイクケーブル | CANARE ( カナレ ) / EC03-B(XX) BLACK マイクケーブル 3m | 3 | ¥2,180 | ¥6,540 |
ウィンドスクリーン | SHURE ( シュア ) / A58WSBK | 3 | ¥990 | ¥2,970 |
¥83,910 | ||||
消費税 | ¥8,391 | |||
合計 | ¥92,301 |
2024年1月のサウンドハウスでの価格です。
改めて、それぞれのケースまとめました
コスト(ざっくりです) | 音質 | |
ローコスト例 | 1万円~ |
周囲のエアコンの音なども入る。 手軽な反面、聞き取りやすさは劣る |
こだわる例 | 10万円~15万円程度 |
一人づつマイクを用意する。非常にきれいに集音できる。レコーダー単体の場合は屋外でもきれいに録音できる |
番外編 ミキサーを使用する例
録音にミキサーを使用するケースがありますが、社内ラジオでは買わない事をおすすめ致します。
ミキサーはそもそもミックスする機材。社内ラジオは編集を行う事を考えると、複数の人のトークがミックスされた状態の音声ファイルひとつで編集を行うのは編集の自由度が大幅に下がります。
ミキサーを使用する場合はこうなります。
馬鹿にできない社内ラジオの音質
さて、社内ラジオの音質にこだわるのか。社内ラジオだから、多少歪んだりノイジーでも良いではないか!
という声が聞こえてきそうですが、以下の調査結果を見てください。音質がよいと、低音質に比べて、内容が重要であると感じられやすいということがわかっています。
Eryn J. Newman, Norbert Schwarzの2018年の研究
Good Sound, Good Research: How Audio Quality Influences Perceptions of the Research and Researcher
ということは、音質にこだわると社内ラジオの訴求力を上げることができるということです。
上記の観点から、機材は安価でもこだわるとメリットも大きい、ということがおわかりいただけると思います。
マイクやケーブルなどについてもう少し詳しく
Shure SM58
当社が使用するのはこのマイク。Shure SM58。世界で最も売れています。非常に使い勝手がよく丈夫。マイクの選択肢はたくさんありますが、最も売れているものは部品も手に入りやすいです。多くのスタジオや収録機材をおいている現場でボロボロになったこのマイクを見ることがあります。ぼろぼろになっても現役で使用されている、ということは信頼の証でしょう。
Audio Technica ATR-2100x USB
SM58に酷似したマイク。音質も良いです。
SM57 Beta A
他にも、高音がキレイに録音できるモデルもあります。かなり音質が異なります。テレビの中継などで使われていることもあります。
女性の声には向いています。私は男性なので向きません。自分の声をこのマイクで収録したものは低音部分が弱く感じますのでイマイチ迫力にかける印象になります。
マイクスタンド
マイクスタンド。あったら便利かもしれませんがなくても収録できます。マイクスタンドです。しかし、これはあったほうが良いです。
マイクを握って話すことに慣れていない人がほとんど。話しながらマイクを意識することは高度な注意力が必要です。ほとんどの人はマイクの扱いに詳しいわけではありません。マイクスタンドは用意しましょう。
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/190852/
マイクキャップ
これは必須のアイテム。マイクのヘッド部分は唾液で汚れます。社内ラジオではマイクを使い回すことを考えるとマイクキャップは必須でしょう。
ケーブル
カナレというメーカーのケーブルが音質がよい、と言われています。ケーブルは短いほど音質がよく、高価になります。
PCに必要なスペックは?
収録の環境は整った。では、ここからは編集の観点から、PCのスペックを確認してみましょう。私のPC環境です。2019年に購入したドスパラのガレリアというPCを使用しています。
https://www.yodobashi.com/product/100000001004168609/
CPU:Core i7-8700
GPU:GTX1060 3GB
メモリ:16GB
SSD:240GB
HDD:1TB
これにメモリを16G増設して使用しています。今となっては決してハイスペックではないですが、十分に活躍してくれています。PCのスペックはCPUとメモリがポイントです。編集時の音声データのレンダリング(ファイル書き出し)スピードに影響するからです。
推奨スペック
CPU : core i5 以上(あくまで目安)
メモリ:16GB
ほしいところです。ちなみに、私のサブPCはノートPC、メモリ8GBのレッツノートですが、このスペックでは正直編集はしたくないです😵
レンダリングにものすごく時間がかかります。編集作業に時間がかかるのはできれば避けたいですね!さて、ここまでが用意する機材です。いわばハードの部分。ここからはソフトです。では、いってみましょう!
社内ラジオのDJ(パーソナリティ)を選ぶ
さて、いよいよ社内ラジオDJのチョイスです。社内にDJができる人がいる場合は、自社での運用が可能ですね。総務や広報部門の社員さんが行うのも良いですし、社長自ら行う会社もあります。
社内の人気になれるような人材がよいでしょう。必須の要素を挙げるとすると・・・
・好感度がある
社内ラジオは聞かれなければ意味がありません。社内の人気社員がDJを行うのが最もよい滑り出しでしょう。
ラジオの魅力はパーソナリティによる部分が大きい
ラジオはエンゲージメントのメディアです。2023年に、30000人を対象に行われたアメリカの調査では、ラジオを聞く理由はパーソナリティやDJが好きだから、という結が出ております。
社内でラジオを行う会社が増えてきておりますが盛り上がっているとは言えないと思っています。パーソナリティの魅力はラジオの魅力そのもの。
しかし、一人ではなく、2人体制でもよいわけです。2人体制はいろいろな意味で安心。トークに詰まっても、カバーできるし、2人のコンビネーション自体が魅力になることもある。社内への訴求力も上がります。
収録の様子はこんな感じです
社内ラジオ用のBGMを用意する
BGMをつける理由は3つあります。
・ブランディング(この曲がかかると、このコーナーなど変えないパートをつくることで番組を記憶にとどめてもらう)
・ノイズをマスクする(収録のノイズを隠す)
・番組に変化をつける(単調な話でも、音楽で変化をつけることができる)
という理由でBGMは馬鹿にできません。それどころか絶対に必要な要素でしょう。
MUSMUS(無料)
完全フリー、ロイヤリティフリーです。微妙なものも多いですが、コストをかけずにできる方法としてはこういうフリーサイトを使用するのはよい選択肢でしょう。
Artlist(有料)
こちらは月5000円くらいで使用し放題。もちろんロイヤリティフリーです。しかも超絶クオリティです。1ヶ月だけ契約して取りまくって解約する、などの方法もあるかもです。
社内に発信する媒体を選択する
正直、これは何でもありだと思います。社内報なので、社内向け。社員様が効きやすい媒体を用意してあげるのがよいです。
youtubeの限定公開機能を使用するのも良いでしょう。何故か?youtubeが有利である点は以下です。
- 音楽を使用しやすい
- 誰でも使用できる親しみやすいメディアである
- アプリをインストールして、とアナウンスする必要がないので導入がスムーズ
youtubeの音楽使用がしやすいのは著作権
音楽に関しての制約が少ないのは大きなメリットです。音楽は著作者がいます。知識が薄い状態で音楽を使用すると知らずに著作権を侵害する事になりかねません。
Youtubeは、jasracと包括契約という契約を結んでいます。つまり、動画をアップロードする個人や法人に変わってyoutubeがjasracと予め契約を結んでくれているということです。
https://www.jasrac.or.jp/smt/news/20/ugc.html
これは大きなメリットであるといえます。
統計はどうか?
youtubeはかなり詳しく統計を取ることができます。
・聴取数(全体聴取数/個別エピソード聴取数)
・離脱時間(エンゲージメント)
・トップ聴取ランキング
・聴取地域
色々と便利機能が備わっていますが、youtubeをおすすめすると会社のセキュリティが・・・ということでセキュリティを超えられないケースも多いです。大企業は特にそうです。
Microsoft teamsを使用するケースもあります。統計もわかりやすく出ますので、プラットフォームにお金をかけなくても多くの会社様では、無料で社内ラジオをスタートする環境が整ってることと思います。
巻き込み、社内の空気づくりをする
さて、ここが一番の山です。
トップダウン型で「仕事の一部だからききなさい」とするのもよいですが、ここではボトムアップ型を想定。
まずは、仲間作りです。社内ラジオの仲間を増やしましょう。この記事を読んでくださっている方は「テストで始めたい」と思っている方を想定。ですので、社内で
「社内ラジオ、面白いやん!」
という空気をつくることがとても大事です。
まずは仲間を増やしましょう。
「社内ラジオってやってみたいんだけど、どう?」
「おもしろそう!」
となってくれる方を増やすのです。20代の若手は音声メディアに明るい傾向にあります。
世代の7割以上が「音声コンテンツをよく聞いている、聞く機会が増えた」
株式会社Voicyが株式会社電通と共同で、「音声メディア利用」に関するアンケートを実施。
対象は200人のZ世代の現役大学生
2021年8月
「声」で企業の経営課題解決を支援するサービス「KOELUTION(コエリューション)」を展
開。
<KOELUTION導入企業の実績>
KOELUTION導入をした社員200人のアパレル企業では、
■ 放送を聴いて会社のことをもっと知りたいと思った 75%
■ テキストよりも、音声の方が会社や社員が伝えたい内容に共感できる 83%
と回答。
「放送を聴いて、素晴らしい社員がいるのだなと初めて知りました」
「次回の放送も楽しみに待っています。」
「わたしも放送やってみたいです!」
私も放送やってみたいですというのが最高だね、ラジオは動画と違って出演への心理的ハードルがとても低いのが特徴。そして自分の話を聞いてくれる人がいると言う気持ちよさ。
人間は話をした生き物なんです。しかし動画はちょっとハードルが高い、だけどラジオだったら気軽に出れる出てもいいかなっていう気持ちになりやすいんですね、きっと。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000220.000021111.html
台本を作ってみる
一人語りの場合、台本があったほうが無難でしょう。ちなみに、私は一言一句セリフを作っています。フリートークでなにもなしで話せる!
という自信がない限り、台本は用意すべきです。私はワードのベタうちです。
社内ラジオを編集してみる
編集はDawというソフトウェアを使用します。
Presonus Studio One6 Prime
フリーソフトとしては申し訳ないぐらい機能が高く、ものすごく音がよいです。当社株式会社オフィスエンニチはこのソフトのPro版を使用しています。
Audacity
こちらもフリーの編集ソフトです。こちらは上記のソフトより簡易ですが、凝ったことをしないなら十分使用できます。
https://forest.watch.impress.co.jp/library/software/audacity/
編集の様子です
あとは配信し、反響をみましょう
さあ、編集ができました。あとは配信して、反響を確認して、チューニングしていきます。
楽しむことは最も大事です
社内ラジオは配信する人が楽しく進めることが最も大事。楽しさはリスナーに伝わるのです。
ボトムアップ型で社内ラジオを行う場合、楽しく進めるため、仲間作りがキーになるのはそのためです。
「私も出演したい!」
という人がでてくると、社内ラジオが社内報として、公式な市民権を得るようになりますぜひ、トライしてみてください!
ではまた!