インナーブランディングの成功事例を4社解説!成功の秘訣はコミュニケーション量だった!?
インナーブランディングとは企業ブランドの価値や目指す姿を社員に理解させ、行動レベルで浸透させる活動のことを指します。これに対して、自社のブランド価値を社外に対して啓発する事をアウターブランディング(エクスターナルブランディング)と呼ばれることもあります。
インナーブランディング研究の第一人者である大妻女子大学短期大学部 甲斐莊 正晃(カイノショウ マサアキ)氏の定義による
社内ラジオ事業者として日本初であり、ナンバーワンの実績を誇る株式会社オフィスエンニチの高間がインナーブランディングの成功事例を4例ピックアップしてみました。どの例も圧倒的な活動量です。そして根底にある会社をよくしよう、という思いに共感します。では早速みていきましょう。
実際のインナーブランディングの成功事例を見てみます
Contents
大手高炉メーカー様
当社が社内ラジオで関わっている会社様です。社員のコミュニケーションを活性するために社内ラジオを導入。理念やパーパス浸透の手前の段階の課題ですね。
課題
大きな工場の中で社員同士がお互いを知らず、コミュニケーションが活性化しない
会社への誇りや愛着を持つ社員を増やしたい
(これは当社の勝手な推測ですが、社内報の究極の目的は離職防止です)
行ったこと
まず、「会社」を好きになってもらう前に、人に興味を持ってもらうことを目指し、社員の人柄や取り組みにフォーカスを当てました。
あえて理念や戦略などに直接触れることをせず、注目人材やトピックスの紹介、人柄を紹介を行います。
頻度は2回/月(1年間)のペースで、社内ラジオを聞くとポジティブな雰囲気を感じ、「うちの会社ってこんな明るかったっけ?」とか「思ってたより楽しい会社やん」という気持ちになってもらうよう、イメージしながら、コンテンツづくりをすすめました。
どのような結果が出たか
社内ラジオの場が楽しいコミュニケーションの場であると認識され、聞かれるコンテンツに成長。導入当初は一部の工場のみで発信していた番組ですが、全社に浸透することに。じわじわと社内に広がっていき、コミュニケーションの場となっています。
当社が神戸製鋼所様で運営する社内社内ラジオが社内のコンテストで準グランプリを受賞しました
社内ラジオに出てくださった社員様はとても前向きで、会社への愛が溢れている印象を受けました。聞いてくださる社員様は、出演した社員さまの語り口から会社へのポジティブな気持ちを感じ取るものと思います。
こういう雰囲気の醸成を通して、一人でも多く、会社にポジティブで明るい印象をもつ社員様を増やしていきました。
運用上の気づき
社内ラジオは機動力に優れていて、「取材」とかこつけて社員と話す機会をつくることはやりやすいです。
ラジオの機会を利用して、社員の思っていることや温度感を吸い上げて社内報にする、というのは双方向性の一つの形でしょう。
それらを通してコミュニケーションを活性するには、ある程度の量が大事です。少なすぎても効果は薄く、多すぎても負担が大きいので、月1回~2回が妥当なところではないか、と当社はみております。
ただし、この会社様では社内ラジオだけで成果を出したわけではありません。社内ラジオに会社を変えるほどの力があるわけではなく、他のリアルな取り組みもたくさんされています。
- 社内の取り組みをアワードとして表彰するイベントを行う
- スローガンを作る
- 各部門で目標を設定して取り組む
など、複数の取り組みを通してすこしづつ成果を出しておられます。
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株式会社アイワード
同社は「民主的な運営」を運営上の重要な方針として定めています。そのための具体的な施策として、特に情報の共有化を大事にされています。
全社員が業務の気付きや提案を書いた日報を毎日提出。なんと、昭和58年から続いているそう。社長と専務が社員の提出した日報から共有すべきものをピックアップ。それをB5版の8ページ程度の社内報に掲載するそうです。
注目はその頻度。なんと社内報は週に2回から3回発行されるそうで、ほぼ日刊の時期もあるとか。この頻度での社内報の発行は普通の会社ではあまり行われていません。これは凄いことだと感じます。
https://www.jagat.or.jp/past_archives/story/4693.html
2022年2月8日追記
さて、このアイワード様に、お話を直接伺うという大変嬉しい機会がありました。社員が日報を書き、それを社内報として、ほぼ日刊で紙で配る。便利なツールはいくらでもあるが、人の手で行っているんだ、それが大事なんだ、という信念を感じます。
社長が語ってくれた社内報
社長が社内報にかける思いを語ってくれました。
社員が240名もいるので、日報をチェックするのは大変だが、コミュニケーションを生み出すきっかけになる。だから良いことも悪いことも合わせて掲載する。
かつては「こんなことやって意味があるんですかね」という声もあった。こういう意見は紛れもない社員の声なので評価をせず、そのまま掲載する。
当社の社内報は「フォーラム」という名前。「フォーラム」とは討論の場という意味だ。その社員の発言がきっかけになって、「フォーラム」上で議論が交わされることに。
結果としては、残すべきという声が多く、 現在も続いてる。(2022年2月7日現在 6236号)
長く運営しているといろいろな事があるが、思いを持って続けることが如何に大事か、ということがわかります。
また、もう一つ重要な点は「討議の場」であるということ。会社と社員のコミュニケーションは双方向である必要がある。「なんでも言っていい」という安心感は社員にとってはとても大事です。
その結果として討議はディスカッションになり、アイデアになり、形になるということです。
コミュニケーションが生み出す技術力
この社内報がきっかけで技術力の向上にも役立っているそう。同社は日本で唯一、カラー写真の科学的復元技術をお持ちの会社。社内報を含めたコミュニケーションがこのような技術にもつながっているのだとか。デヴィ夫人の 60 年前の写真の復元がこちら。
これはすごい技術です。写真は温度と湿度、光などで、色あせが起こるそうですが、写真には、必ず色の元が残っているので、それを科学的に復元することで可能になったとのこと。
こんなすごい技術をもつ会社はどのようなインナーブランディングをしているのか。
社長の人柄がとても暖かい
インナーブランディングの根幹には人がある。人の心が見えるからこそ、社内がひとつになる。今回、社長とお話をして、そう思わずにいられない人柄を感じました。
社長の語ってくれたエピソードで印象的だったのが以下。
49歳で癌で亡くなられた部長さんがおられた。この方は太陽のような女性で社員からもとても愛されていた。亡くなられた際には、社内報で追悼号を企画し、膨大な社員のメッセージを掲載した。
亡くなられた部長さんはがん闘病の漫画を書いておられた。アイワード社では、ご家族からその漫画を預かり、部長の命日に製本して出版する、プロジェクトを進めている。
なんということでしょうか。ここまでするなんて。
という書籍にも紹介されいてるアイワードさん、本気で良い会社をつくろうという気持ちが行動にも現れています。
これがブランディングの核心ではないか。見えにくい心の部分を見えるように言語化し、行動に表す。このことで、組織が働きがいのある場所になっていくものだと、教えていただいた気がします。
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株式会社ニチレイフーズ
冷凍食品の企業様。こちらは、「ハミダス活動」として、社内活性化プロジェクトを進めておられます。2018年に消費者庁長官表彰」を受賞しています。何しろ名前がいい。
はみ出すことをよしとしてこなかった日本社会で、はみ出すことを推奨する思いが込められてるかのようです。ホームページを見ると、 こう書いてあります。
今の立ち位置から一歩ハミダシて、手を携える。
つまり、周囲との連携をすることです。
自分の仕事の範囲を決めずに、勇気を持って仕事をカブってみましょう。
取り組み
- 毎月1回以上、社長のトップメッセージを動画で配信
- 社員の少人数ミーティング(なんと7年間で500回以上!)
- T シャツを作って社員に配る
- 工場ごとのロゴを作る
動画は役員層と経営トップの想いや社内情報を伝える事を目的にしているそうで、ハミダス活動開始から毎月1本以上という勢いですから、とにかくその手数が多いことに驚かされます。
こういう活動をされている会社は少なくはありませんが、 ニチレイさんの場合は圧倒的な活動量!逆の見方をすると、トップの思いや、 社内の情報を共有するのに、このくらいの活動量は必要だと判断されたということでしょう。
ホームページでもかなりのページ数を使って紹介をされていて本気度がわかります。https://www.nichireifoods.co.jp/corporate/hamidasu/top/
カルビー株式会社
カルビーは社内報に力を入れられています。
全国の優秀な社内報を表彰する『社内報アワード』を主催するウィズワークスの代表浪木克文氏は、社内報によるインナーコミュニケーションは、イノベーティブな企業づくりを促進すると語っています。同感です、社内報が果たす役割は決して小さくない。
カルビーでは、社内報で 「経団連推薦社内報」にて企画賞を受賞、「社内報アワード2020」も受賞されています。
A4で20ページ、2ヶ月に1回発行、その間に Web 版も製作されているということ。こちらも、ものすごく力を入れていらっしゃるようです。 紙と WEB を組み合わせて行なっているところがポイントで、どうしても一方通行になりがちな社内報を社員参加型の形にして運用されているようです。
2012年に、ウェブを取り入れられたようで、社長のメッセージに匿名でコメントをつけられるようにされました。 その話がまた面白い。
社長が「夏休みにクルーズに行きます」と発言。その発言に対して社員からは匿名で、「現場は忙しくて長い夏休みなんてとれない」というコメントが入ったそう。そこから経営層と社員のコミュニケーションが活発化したんだそうです。
やはりカルビーでも同じく、情報をとにかくたくさん出すことに気を使っている様子。
社内の一大イベントも掲載するし、社員が演劇を見に行ったというパーソナルなニュースまで。
https://cd.zeroin.co.jp/cappy/calbeeintranet/
https://hiptokyo.jp/hiptalk/shanaiho/
インナーブランディングを行う効果は多岐に渡る
さて、いろいろ見てきましたが、インナーブランディングはなぜ行うのか?理論的な背景を少し解説。インナーブランディングは様々な効果がありますが、とどのつまり、会社を強くする足腰を作るということと当社は考えております。
- 社員の顧客志向の向上と顧客満足度の向上
- 顧客視点の新製品・サービス開発
- 社員によるブランド価値の社外発信
- 社員が仕事にやりがいや前向きな気持を感じるようになる
- 離職率が低下する
- 社内一体感醸成
- 経営方針の社内浸透と業務活動での実践
インナーブランディングのステップ
一般的にいわれるインナーブランディングは企業ブランドの価値や目指す姿を社員に理解させ、行動レベルで浸透させる活動のことを指しますが、当社ではもう少し広い意味でインナーブランディングを捉えています。
あくまでも私の独自見解に近いです。まず経営を俯瞰で捉える際に活用されるフレームワークである7Sの視点を活用致しました。
7Sのフレームワークでは経営戦略やスキル、スタッフなど全てをデザインする事で、内部をブランディングすることが見えてきますね。一見難しそうに見えますが、単に整理の方法と捉えるとよいです。通常、7Sフレームワークを使用して組織全体を強くする仕事を行うのは経営企画室や、外部のコンサルタントでしょう。
当記事を読んでくださっているあなたがそういう部門の方ならばぜひ使用してみてください。広報部門や人事総務で社内報を砦柵する部門に携わっている方ならば、参考程度に。
インナーブランディングとして全体を整理し、理念の浸透などに的を絞ると、理念浸透のフローは以下のステップとなります。
知る/理解する/共感する/行動するの4ステップ
インナーブランディングは、上記のファネル(じょうご)の図で説明をすることができます。このステップは非常にシンプル。顧客の購買行動を説明する際にもこのファネルで説明をされることが多いのですが、インナーブランディングも同様です。
まず理念や、パーパスを認知する。次にそれを理解する。理解して共感する。インナーブランディングは、とても地道な活動で、繰り返し、粘り強く行っていく必要があるでしょう。
インナーブランディングも一対一のコミュニケーションと変わらない
とはいえ、上記のプロセスはとても時間のかかるものです。お知らせすることで理解・共感が得られるわけがありません。コミュニケーションによって丁寧に伝えていく取り組みです。まさに「会社」と社員のコミュニケーションです。
では、会社とは誰か?
「カイシャ」さんなんていませんから、インナーブランディングを行う意思のある人を指します。当然、担当者はここに含まれると思います。担当者は社員とのコミュニケーションによってインナーブランディングを成し遂げることが仕事になります。
コミュニケーションの施策として考えられるものは以下のようなものがありそうです。
【イベント系】
・運動会
・社長と社員座談会
・クラブ活動
【会社からの発信】
・社内報
・メール
・グループウェアでの発信
全て行えるなら行いたいですが、多くの企業様はリソースが不足しているのが現状でしょう。
インナーブランディングの専門家ではないあなたがまずできることは?
多くの社員(管理職は別)は基本的に「会社」「社長」「経営」に興味はありません。施策を継続するには、地道な努力が必要です。片手間でできることではありません。
まずは、「興味がない」を「興味がある」状態にする。それには、インナーブランディングを進める意思のある社員が社内への広報活動として顔を売ることがファーストステップかと思います。
「〇〇さんが言うから〇〇の記事、読んでみるか」
などから入るのだと思います。この地道な取り組みを通して社員は会社が発信するコンテンツに興味関心を持ちます。(これは組織がもつ固有の文化によって難易度が全く異なります。後述しますね)
このプロセスにより、社員一人ひとりの行動レベルに価値観や、意図して浸透したいことが少しづつ認識されています。
まとめ
成功事例をここまで見てきましたが、インナーブランディングにおいてはとにかくコミュニケーションの量を大事にしていることがわかります。
発信する側として見たときに、数ヶ月に一度だけの情報発信では、やはり手数(てかず)としては少ないでしょう。発信物として形にする社内報はきっかけにすぎません。成果物を「ダシ」に、社員とコミュニケーションをとる口実にするのです。
理念やビジョンの浸透を行うならば、粘り強く根気強く、同じメッセージを形を変えながら何度もやっていくこと。
当社の社内報社内ラジオを長期のエンゲージメントを醸成するツールとしてご検討いただけますと幸いです。詳しくは、相談無料ですので、下記からお問い合わせください。