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派遣会社の離職とエンゲージメント向上の具体的事例2選

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派遣社員は多くの企業にとって不可欠な存在です。しかし、派遣社員の定着率の低さやナレッジ共有の不足は、多くの企業が直面する深刻な課題です。

採用コストの増加、生産性の低下、サービスの質の不安定化など、経営上の損失につながります。本記事では、これらの課題に対してデータや事例に基づき、組織内のコミュニケーションという切り口から多角的に迫ります。

当記事は社内ラジオの専門家が書いています。詳しく知りたい方はこちら

派遣社員の就業実態とコミュニケーション不全の現状

派遣社員の定着率向上とナレッジ共有の促進は、多くの派遣会社にとっ課題です。その背景には、派遣社員特有の就業形態や、それに伴うコミュニケーションの難しさが見え隠れします。

派遣社員の定着率と離職要因

派遣社員の離職に関するデータは、しばしば「年間離職率」という形で語られますが、より注意深く見るべきは就業初期の定着状況です。

ある調査によれば、「派遣社員の年間離職率は3%」という比較的低い数値が示される一方で、「就業開始から3ヶ月で30%も辞めていた」と。

驚愕の初期離職率です。この現象は、採用プロセスや事前の情報提供と、実際の就業環境や業務内容との間に大きなギャップが存在すること、あるいは初期のサポート体制や職場への適応支援が不十分であることを物語っています。

更にこんなデータも
一般社団法人日本人材派遣協会の「派遣社員WEBアンケート調査(2024年度)」によると、有期労働契約で働く派遣社員のうち、契約期間が「3ヶ月」である割合が64.5%と過半数を占めています 。

このような短期契約の繰り返しは、派遣社員が組織に対する帰属意識や長期的なコミットメントを醸成することを難しくし、結果として短期離職の一因となっている可能性が考えられます。

離職理由に迫ってみる


派遣社員が離職を決意する背景には、複合的な要因が存在します。株式会社ニッコーの調査によると、派遣社員の離職理由ワースト5が以下。

1 職場環境

2 仕事内容

3 賃金・給料の不満

4 人間関係

5 寮環境

出展元:https://022099.jp/sales/content/post_1.html

1

職場環境

残業時間の長さ、工場などでの特有の臭い(ゴム、油、溶剤など)、交替勤務といった勤務形態が合わない、といった点が挙げられています。派遣社員の中には、積極的に残業をして収入を増やしたい層と、プライベートの時間を重視したい層が存在し、個々のニーズと実際の職場環境とのミスマッチが離職に繋がります 。

2

仕事内容

「思っていた仕事内容と違った」「作業の負荷に体力が追いつかなかった」「自分には合わないと感じた」といった声が多く聞かれます。特に、事前の説明や職場見学時のイメージと、実際に就業してからの現実との間に乖離が生じることは大きな原因ですね。

3

賃金・給料面の不満

「入社時の説明では納得していたが、実際に生活してみると余裕がない」「より給料の良い仕事を見つけた」「ライフステージの変化でより多くの収入が必要になった」など、経済的な側面からの不満も大きな理由です 。

4

人間関係

派遣スタッフ同士のトラブルのほか、「派遣社員と正社員の関係が良くない」といった、職場内でのコミュニケーションや人間関係の悩みも離職理由の上位に挙げられています 。

また、株式会社ビズヒッツが実施した調査では、派遣社員として働く人の7割が「辞めたいと思ったことがある」と回答しており、その最大の理由は「収入面への不満」でした。その他にも、「待遇の悪さ」「疎外感」「雇用の不安定さ」「やりがいのなさ」といった点が挙げられています 。
賃金という経済的要因もさることながら、「職場環境」「仕事内容のミスマッチ」「人間関係」といった日々の就業経験や職場での人間関係の質が定着に極めて大きな影響を与えていることがわかります。

「疎外感」 は、コミュニケーション不足が直接的に引き起こす問題と言えるでしょう。たとえ給与水準が満足でなくとも、働きがいがあり、尊重され、円滑なコミュニケーションが取れる環境であれば、定着率の改善は期待できます。

次に、視点を派遣会社に移し、派遣社員の知識共有が進まないという側面も見てみます。

ナレッジ共有が進まない背景と組織的影響

派遣社員の流動性の高さは、組織における知識やノウハウの属人化を招きやすいという構造的な問題を抱えています。業務を通じて得られた知見や効率的な作業手順が、個々の派遣社員の中に留まり、契約終了と共に消滅してしまうわけです。

ナレッジマネジメントの取り組みが失敗する典型的なパターンとして、「ナレッジの記録がしづらい」「蓄積されたナレッジを探しにくい」「そもそもナレッジが活用されない」といった点が指摘されています 。

これらの問題は、派遣先ごとに業務内容が多様であることや、短期契約が中心であるために個々の派遣社員がナレッジを蓄積・共有するインセンティブを持ちにくいという、定着率が高くない業界特有の事情によるところが大きいようです。


特に、前述したように就業初期の離職率が高い環境下では、ナレッジ共有の不備は組織にとって致命的な脆弱性となり得ます。3ヶ月以内に3割のスタッフが入れ替わるような状況 で、業務知識やノウハウが効果的に引き継がれなければ、組織は常に貴重な業務遂行能力を失い続けることになります。
ナレッジ共有が円滑に行われないことによる組織的な影響は甚大です。具体的には、新人教育コストの恒常的な発生、業務プロセスの非効率化、業務品質のばらつきや低下、顧客からのクレーム増加、そして新たな価値創造やイノベーションの阻害といった、負のスパイラルに陥る危険性があります。

派遣会社が抱えるコミュニケーション課題

派遣社員がしばしば感じる「疎外感」 や「帰属意識の希薄さ」 は、派遣会社や派遣先企業とのコミュニケーション不足が大きな要因となっていることが想像できます。派遣社員は通常、派遣会社のオフィスではなく派遣先企業で就業するため、物理的な距離感が心理的な距離感に直結します。

このような状況下で、派遣会社からの積極的かつ継続的なコミュニケーションが不足すると、派遣社員は自身を単なる労働力として扱われていると感じ、派遣会社に対するロイヤリティや組織の一員であるという意識を持ちにくくなります。これは当然でしょう。接触頻度が高ければ高いほど親近感を持ちやすい、というザイオンス効果そのものです。

コミュニケーションの課題はエンゲージメントの低下を通じて、組織のパフォーマンスに無視できない影響を及ぼしています。

派遣会社のコミュニケーション施策

派遣会社は、単に業務指示や事務連絡を行うだけでなく、自社のビジョンや提供価値、サポート体制について積極的に伝え、派遣社員との間に信頼関係とコミュニティ感を育むためのコミュニケーション戦略を意識的に展開する必要がありそうです。

エンゲージメント向上のための施策

派遣社員の定着率やパフォーマンスの低下は、多くの場合コミュニケーションの問題に行き着きます。エンゲージメントを高めるためには、まず土台となるコミュニケーションの施策が不可欠です。

1. 定期面談ではじっくり「聴く」

派遣社員との最も重要な接点は、定期的な面談です。しかし、これが形式的なものになっていては意味がありません。

Q
目的を明確

「仕事へのモチベーション」「現状とのギャップ」「職場の悩み」などを具体的に質問し、社員の「今」を深く理解することに努めることは重要です。

Q
心理的安全性の確保

職場近くのカフェなど、リラックスして話せる環境を用意することも大切です。面談内容はシートに記録し、具体的な課題解決に繋げることで、信頼関係が構築されます。

Q
形骸化させない工夫

職場近くのカフェなど、リラックスして話せる環境を用意することも大切です。面談内容はシートに記録し、具体的な課題解決に繋げることで、信頼関係が構築されます。

2. 帰属意識を創出する

安心して能力を発揮してもらうためには、組織への帰属意識と心理的安全性は必須です。実はそんなに難しくありません。

  • メンター制度: 新人や経験の浅い社員をサポートする体制は、早期の孤立を防ぎます。
  • 理念の共有: 企業理念や大切にしている価値観を共有することも、組織の一員であるという意識を育む上で効果的です。
  • 感謝の文化: 「サンクスカード」のような取り組みは、日々の貢献を可視化し、ポジティブな人間関係を築きます。
Q
メンター制度

新人や経験の浅い社員をサポートする体制は、早期の孤立を防ぎます。

Q
理念の共有

企業理念や大切にしている価値観を共有することは組織の一員であるという意識ニつながります。

Q
感謝の文化

「サンクスカード」などの取り組みは恥ずかしいですが嬉しいです。嫌な気持ちにはなりませんし、ポジティブな雰囲気を作ります。

成功事例に学ぶコミュニケーション施策

実際に派遣社員の定着率改善に成功した企業はの取り組みを見てみます。

事例:ポッカサッポロフード&ビバレッジ群馬工場

かつて同工場では、派遣社員の9割が数ヶ月で離職するという深刻な課題を抱えていました。原因は、専門用語だらけの「分かりにくいマニュアル」だったそうです。

そこで、未経験者の視点でマニュアルを徹底的に見直し、写真付きの用語集や作業手順の動画を作成。これを導入した結果、離職率は劇的に改善したそうです。

この事例は、入社初期の分かりやすい情報提供がいかに重要かということを物語っています。新しい職場は不安9割です。なるべく不安なく働ける工夫は早期離職を防ぐ鍵になります。

事例2:UTグループ株式会社

製造業や建設業への人材派遣を行うUTグループは、「無期雇用派遣」を軸に、派遣社員が長期的に安心してキャリアを築ける仕組みを構築し、高い定着率を実現しています。

課題

有期雇用の派遣社員が抱える雇用の不安定さや、キャリアアップの見通しの立てにくさ。現場での孤立感があったそう。

施策

キャリア・プラットフォームの構築: 社員を原則「無期雇用」とし、スキルや経験に応じて役職や給与が上がる明確なキャリアパスを提示。グループ内で職種を変えられる「One UT」というキャリアチェンジ制度も用意し、長期的なキャリア形成を支援しているそうです。

チームでの派遣: リーダーを含む数名のチーム単位で派遣先に常駐する「チーム派遣」を導入。これにより、現場でのOJTやサポートがチーム内で行われ、新しく配属された社員の孤立感を解消し、早期の立ち上がりを促進しています。

参考資料:https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2018/12/050-055.pdf

「社内ラジオ」という施策も

「社内ラジオ(音声コンテンツ)」という手法もあります。音声は、地理的に分散している派遣社員とのコミュニケーション課題を解決する大きな可能性を秘めています。

経営メッセージから、業務のTIPS、同僚の紹介まで、コンテンツは様々です。大切なのは、派遣社員が「私たちのためのラジオだ」と感じられるような、双方向のコミュニケーションを目指すことです。

コミュニケーションの工夫が派遣会社の未来を左右する

派遣社員のエンゲージメント向上は、コスト削減に留まらず、派遣会社の競争力そのものを高めます。

  1. 現状把握と即時改善: まずは面談の見直しや、オンボーディング資料の整備から始めましょう。
  2. 仕組み化と本格展開: ナレッジ共有ツールや「社内ラジオ」を本格導入し、施策を定着させます。
  3. 文化としての定着: 効果測定を繰り返しながら、コミュニケーションを重視する組織文化を醸成します。

重要なのは、派遣社員を単なる「労働力」ではなく、共に成長する「人財」として捉え、能動的に関与していく姿勢です。

泥臭い人間関係を重視した対話で派遣社員一人ひとりに関心をもち、関わることが選ばれる秘訣になりそうです。


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